学生時代いろんなバイトをした。例えば、大型コンテナ車の助手。この話をする前に…。
中学時代の友人Sは色黒で天パ。気づいたときは仲良くなっていたので私自身は思ったこともないのだが、周囲の人間は彼のことをちょっと怖いと感じていたらしい。中3のとき、「後輩が怖がって誰も話しかけてくれねーんだよ」って悩んでいた。そんな彼が就職して間もないころ、終電になんとか飛び乗ったのだが、酔っていたこともあって熟睡して終点まで行ってしまった。仕方なくタクシーで家まで帰ったのだが、めっちゃ取られるだろーな、って覚悟していたら、初乗り料金しか請求されなかったらしい。確かに酔ってたから、かなりふんぞり返った感じで座っていたらしいけど、「俺またやべー奴だと思われたのかも」って苦笑していた。
そんな話を深夜のファミレスでしていた時、まだ学生だった私が「なんか良いバイトない?」って聞いたら、Sが「大型コンテナ車の助手って超楽だよ!」って言ってきた。貨物列車の貨物をトラックに積んで、いろんなところで荷物を降ろしたり積んだりするんだけど、助手はただ助手席に座っていれば良いだけ、と言う。せめて寝ちゃダメだって思って頑張ってたら運転手が、眠かったら寝て良いよ、って言ってくれて寝ちゃったよ、と言うのだ。それはおいしい、と思って仙台に帰ってからバイト紹介所で、大型コンテナ車の助手、を見つけた私は速攻で申し込んだのだった。
ところが話が違う。きついのなんのって。助手席に座っているだけ、なんて嘘八百で、荷物の揚げ降ろしを完全に付き合わされた。木炭やみかんの入った箱の重いこと。「にーちゃんもう顎上がってるぞ!」とか言われながら夜遅くまで働かされた。そして思った。「くそ~、これはSだったから楽させてもらったに違いない!」って。
一方、京都に行ってからのバイトは良かった。大学構内の張り紙に、塾講師募集。時給5500~と書いてあるのを見つけたときは、「やばいバイトじゃないか?」と一瞬ためらったものの、まずは申し込んでみようと思って電話して面接を受けに行くと、本当に塾講師のバイトだった。詳しくは書けないが(書いても大丈夫だとは思うけど念のため)、生徒(というか親の職業)が特殊だっただけ。私は主に浪人生担当だったけど、少人数制で、1年かけてほぼ全員希望の学部に合格させることができる(どの大学にするかは流石に希望通りとはならないことが多いけど)というのが売り。5年間働いて、最終的には時給7000円くらいになっていたので、大型コンテナ車の助手1日分を、1時間で稼ぐ計算になる。今でもその塾は存在していて、HPを覗くと当時バイトしていた京大院生が今もバイトしているようだ。気持ちはわかる。私が院生だった時にも、よその研究室のODが駿台の講師をしていて教授よりも給料が良い、と噂になっていた。世の中、苦あれば楽あり。なにごとも経験で、話をするだけなら、大型コンテナ車の助手、のほうが面白い。でも、塾講師のバイトでも、特殊な職業の裏の世界を垣間見ることができたのでなかなか良い人生経験になった。ここに書けないのが残念。あと、闇バイトにくれぐれも気を付けて。

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